常磐植物化学研究所

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第3回 食素材の役割のお話~七味唐辛子(3)~

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知ってるようで知らない
食素材の役割のお話~身近な生薬や食品添加物~


(株)常磐植物化学研究所
顧問
鳥越 泰義

- 第3回 七味唐辛子 (3)-

 本連載の第1回目(5月28日号)と第2回目(6月18日号)で、七味唐辛子の成分(薬味)としてアサの実とケシの実、さらにトウガラシとサンショウについて触れた。そこで今回は、ミカンの皮、ゴマそして青ノリについて紹介する。ミカンの皮、特にウンシュウミカンの皮を乾燥したものは陳皮という生薬名で漢方薬に使われる。また、ゴマには黒ゴマと白ゴマがあり、薬用には黒ゴマが使われる。品質にこだわる七味唐辛子はこれらの薬用レベルの生薬を使う。青ノリにはスジアオノリとアオサがあることが知られているが、七味唐辛子にはアオサが繁用されている。

 七味唐辛子の7つの成分を眺めてみると、ほとんどが薬種(生薬)で占められている。アサの実は麻子仁、トウガラシは蕃椒、サンショウは山椒、ミカンの皮は陳皮、そしてゴマは黒胡麻(黒脂麻)という生薬名を持つ。七味唐辛子にはこの他、シソの葉やショウガも使われる。これらの生薬名はそれぞれ蘇葉、生姜と呼ばれる。

 七味唐辛子誕生の地は、お江戸日本橋、大川(隅田川)に近い薬研堀町である。薬研とは生薬を粉にする道具で、昔の医者が薬研を使って病人に与える薬を調製している姿を思い浮かべてもらえるだろう。この付近は大川へ通じる堀が多かったことから薬研の形をした堀、薬研堀という珍しい町名が生まれた。現在の人形町三丁目には「玄冶店跡」の標識が立っている。徳川三代将軍家光が京都から連れてきたお抱えの名医、岡本玄冶が住んでいたことでも知られる。江戸時代の初期、日本橋から人形町、浜町、そして大川までの一帯は、江戸町人文化の発祥の地として賑わっていたそうだ。魚河岸、諸藩からの年貢米は立ち並ぶ埋蔵に集積された。また、芝居小屋も大盛況だった。今もその名残りがあるのは明治座だけである。さらに、幕府公認の遊郭(旧吉原)まで存在してた。薬研堀に住む辛子屋徳右衛門がこのまりの武士や商人、職人から町民まで働く人々の食欲をそそる香辛料として七味唐辛子を発案した背景に思いを馳せてほしい。


掲載:
食品化学新聞 2009年(平成21年)7月16日