第4回 食素材の役割のお話~ワサビ(1)~
知ってるようで知らない
食素材の役割のお話~身近な生薬や食品添加物~
(株)常磐植物化学研究所
顧問
鳥越 泰義
- 第4回 ワサビ (1)-
鮨にワサビ、刺身にワサビ、そして蕎麦にワサビ ―日本の伝統的な食文化の中で、ワサビが重要な地位を占めていることが分かる。ワサビは日本特有の植物で山間の渓流の浅瀬に野生するアブラナ科の多年草。その学名はWASABIA japonicaである。
奈良時代(710~784年)に完成したわが国の刑罰と行政についての法律に、大宝・養老の両律令がある。この中の「賦役令」という法律では、税金(年貢)として供出しなければならない物が列記されており、ここにワサビが登場する。鎌倉時代には寺の精進料理に使われたり、日蓮上人の誕生日に駿河国(静岡県)のワサビが贈られたそうである。
また、室町時代にはワサビ酢が鯉の刺身に使われたともいわれている。ワサビの栽培が始まったのは七味唐辛子の誕生と同じ江戸時代。徳川家康は献上されたワサビの葉が丸い心臓形で徳川の家紋である葵の葉に似ていることから、門外不出の禁制品(御法度品)に指定してしまった。
古い歴史を持つわが国の原産の植物ワサビが、最近、優れた機能性食品として、いくつもの薬効を持つことが明らかにされ始めている。ワサビが鮨や刺身の添え物としてだけでなく。優れた品位のある食品であることを頭に浮かべて、ワサビの世界を眺めてみたい。
関東近辺でワサビの三大栽培地は、静岡、長野、そして東京といえる。静岡のは伊豆の天城山周辺と安部川上流、長野は南安曇地方、特に穂高周辺、東京は奥多摩地域である。
栽培の方法からワサビの種類を別けてみると、伊豆地方は「畳石式ワサビ田」、奥多摩の安部川上流地方は「地沢式ワサビ田」。そして長野の穂高地区は北アルプス連峰の伏流水を利用する「平地式ワサビ田」となっている。
次回は東京の西の端、玉川の源流、奥多摩のワサビを訪ねてみる。
掲載:
食品化学新聞 2009年(平成21年)9月24日









