第7回 食素材の役割のお話~ワサビ(4)~
知ってるようで知らない
食素材の役割のお話~身近な生薬や食品添加物~
(株)常磐植物化学研究所
顧問
鳥越 泰義
- 第7回 ワサビ (4)-
先々月訪ねた奥多摩のワサビ田の特徴は「地沢式」と呼ばれ、先月紹介した伊豆湯ヶ島のワサビ田は「畳石式」の栽培法を主としている。今回は長野県穂高のワサビ田を訪ねてみた。北アルプスの峰々に降った雨の雪解水は伏流水となって東の低地へ走り、安曇野の扇状地で湧き水に変わって地上に出てくる。日本一の生産量を誇る穂高の湧水地帯でのワサビ田は「平地式」栽培法をいわれている。
新宿から松本へ、特急あずさに乗って約3時間、松本駅で大糸線に乗り換えて約30分、豊科駅と穂高駅の中間にある柏矢町駅で降りる。この地で古くからワサビの栽培に取り組んでいる有賀均氏から穂高ワサビについて説明を受けた。穂高のワサビ田は安曇野の扇状地に広がっている。開いた扇の弧状の先端を北アルプスの山々に見立てると、扇の竹の骨は扇央の要に向かういくつもの川といえる。扇の底辺、要の左右はこの土地を流れるいくつもの川の水を集めて流れる大川、犀川といえる。この犀川に万水(よろずい)川、蓼川、穂高川、そして高瀬川などの川が流れ込んでいる。
広々とした安曇野の農地を走り抜ける清流と、ワサビ田の地下から出る湧水の豊富さに驚かされる。この扇状地に北アルプスの連山からきた湧水は、毎日12万トンにもなるといわれている。奥多摩、伊豆湯ヶ島のワサビに田に比べて穂高のワサビ田は広大ね畑であり、農場であった。明科にある有賀氏のワサビ畑で長靴に履き替えて畑に降りてみた。多数の畝の両側にはワサビが植えられている。このワサビ畑の全面で北アルプスからの湧水がしみでてくる。それぞれの畝から流れ出た排水は集まれて清流となり、この扇状地の各所を流れる川へと集まっていく。
穂高の扇状地の要を位置にあって、安曇野市の観光名所にもなっている「大王ワサビ農場」を有賀氏の案内で見学した。東京ドーム11個分もあるといわれる日本一広いワサビ農場は圧巻だった。
東京へ帰る時、有賀氏宅で試食した穂高ワサビの強い辛味と香りは除夜の鐘の響きに似ていた。口にした量が少し多かったのか、ゴーンと口から鼻へ、脳天へと響き渡る辛味と香り、これらはやがて金の余韻のように顔中に広がっていた。
次回は、機能性香辛野菜としてのワサビに触れてみる。
掲載:
食品化学新聞 2009年(平成21年)12月17日








