第9回 中国薬食の原典、神農本草経
知ってるようで知らない
食素材の役割のお話~身近な生薬や食品添加物~
(株)常磐植物化学研究所
顧問
鳥越 泰義
- 第9回 中国薬職の原典、神農本草経-
わが国の食生活で身近なものといえば、ワサビと並んでサンショウが浮かんでくる。サンショウの主な産地は奈良県と和歌山県である。サンショウの季節、春から初夏にかけて両県を訪ねてみるが、それまでのしばらくの間、ちょっと横道にそれて中国薬食の原典である神農本草経について紹介する。
中国の黄河流域に世界四大文明のひとつ「中国文明」が栄えたのは、紀元前1万5000年頃から前3000年頃である。紀元前1100年頃には周王朝が生まれた。この王朝で諸制度を記録した古典に「周礼」がある。ここでは医師を4つの専門医に分けている。(小曽戸洋、漢方の歴史)。最高の地位を与えられたのは「食医」と呼ばれる食事療法医だった。今でいう栄養士の立場から皇帝の食事を管理する医師である。参考までに食医の次は「疾医」(内科医)、さらに「瘍医」(外科医)、そして「獣医」(軍鶏・牛などの治療医)と続く。古代中国で皇帝の命を守るために食生活を重視する考えは、時を経ても変わることはなかった。紀元前200年頃から紀元200年ごろまでの400年間続く漢の時代(前漢、後漢)には、命を守る薬物(植物、動物、鉱物)が自然界から探し出され、まとめられていった。これが古代中国で完成された薬物(本草)書、「神農本草経」だ。中国の伝説上の帝王、薬の神「神農」がまとめてくださったとされて「神農像」まで造られてしまった。
「神農本草経」には、自然界から選び出された365種の薬物が記載されている。これを上薬(上品)、中薬(中品)、そして下薬(下品)の3つに分けている。上薬の120種は食品より少し生命を守る力のある養命酒が選ばれて不老長寿を願っている。中薬120種は保健薬と考えられ病気を予防し、虚弱な体を強くする天然物が記載されている。下薬125種は西洋薬にやや近い治療薬が列記されている。漢方薬は主としてこれらの薬物を巧みに配合してバランスのとれた正常な体へ導こうとしている。
次回は「薬食同根」、「薬膳」について触れてみたい。
掲載:
食品化学新聞 2010年(平成22年)2月25日








