常磐植物化学研究所

常磐植物化学研究所

English

カシス(Black currant)

line
学名

Ribes nigrum L.

科名

ユキノシタ科

別名

クインシーペリー、ブラックカーラント(英)
クロフサスグリ(和)
カシス(仏)

原産国

ヨーロッパ、西アジア、中央アジア、ヒマラヤ

使用部位

葉、果実

成分

■アントシアニン (果実) 2)
delphinidin-3-O-glucoside
delphinidin-3-O-rutinoside
cyanidin-3-O-glucoside
cyanidin-3-O-rutinoside
■プロデルフィニジン(葉) 3)
hb16-01n.gif

図1 カシス含有成分

詳細

Last Update : 2014.7.7      

sub_list.gif植物
 樹高2mほどの落葉低木。ヨーロッパ、西アジア、中央アジア、ヒマラヤなどに自生しており、また多くの温暖な地域で栽培されている。葉は3~5裂しており、その縁は鋸状にぎざぎざしている。花は緑白色で総状花序をなし、夏には直径1cmほどの黒紫色の果実をつける。この果実はブドウのように房をなして樹につくため 、ベリーではなくカーラント(currant 乾しブドウ)の名称がついた。果実は非常に酸味が強く、また独特の風味があるため、生食されることは少ない。近縁の植物としてレッドカーラント、ホワイトカーラントが存在する。

------------------------

sub_list.gif流通品規格
 アントシアニンの規定が設けられる。

------------------------

sub_list.gif概要

~葉はのどを癒し果実はのどを潤す~

 カシス(=ブラックカーラント)の果実から作られるリキュール 'Creme de Cassis'は芳醇な香り、軽い酸味とまろやかな口当たりを持つ果実酒として世界的に有名である。ヨーロッパでは果実をリキュールの他にジャム 、ジュースなどに利用しており、カシスはブドウ、ストロベリー、ブルーベリーと並ぶ非常に人々に馴染みの深い果実である。果実はビタミンCを豊富に含む他、ミネラル類も他のベリーに比べて多く、また抗酸化物質として注目を集めているアントシアニンが多く含まれている。民間療養においては、18世紀にモントラン神父が 「ブラックカーラントの驚くべき物質」という冊子の中で関節炎、肝臓や泌尿器系の病気をよくするものとして果実の薬効を記述しているほか、高血圧、血管脆弱、喉の感染症にも効果があるとされ、人々に使用されてきた。
 さらにブラックカーラントは果実だけではなく葉にも価値がある植物である。古くはその葉を煎じたお茶は、喉の炎症、下痢、風邪を抑えるものとして飲用されてきた。また18~19世紀ごろ英国でインド茶や中国茶が品不足になったとき代替茶として様々なハーブをブレンドしたハーブティが流行したが、ブラックカーラントの葉は風味付けの目的でそこに加えられている。このように薬効だけでなく嗜好品としても価値が高い植物である。
 種子にはγ-リノレン酸が含まれ1)、種子油は化粧品分野で使用されている。

薬用ハーブの詳細を見る

このリンク先は、その植物の期待される効果を示すもので、
当社製品とは、一切関係ございません。

上記内容に同意する

sub_list.gif作用

● 葉

  • ・止瀉作用
  • ・抗炎症作用
● 果実
  • ・眼精疲労改善作用
  • ・視覚機能改善作用
  • ・血流改善作用
  • ・抗ウィルス作用
  • ・止瀉作用

------------------------

sub_list.gif効能(生理活性機能)

● 視覚サイクルの改善(果実)
 cyanidin rutinosideは他の植物では含まれていることが少ないブラックカーラント特有のアントシアニンである。in vitroの試験において、このcyanidin rutinosideには眼球内網膜に存在する視覚物質の一つロドプシンの再合成を促進させる機能があることが認められており(図2)4)、暗順応の改善、夜間視力の改善等の効果が期待できる。

hb16-02.gif
図2  cyanidin rutinoside添加によるロドプシン再合成速度の変化
 それぞれの11-cis-レチナール濃度において、cyanidin rutinosideの添加はコントロールと比較して ロドプシン再合成速度を速めている。

● 抗ウィルス活性(果実)
 in vitroの試験において、ブラックカーラント果汁には抗インフルエンザウィルス活性、抗単純ヘルペスウィルス活性があることが報告されている。この活性は細胞内に進入したウィルスの増殖を抑制することが示唆されている 5) 6)

● 抗ウィルス活性(葉)
 in vitro、in vivoの試験において、抗インフルエンザ活性(A型)があることが報告されている。ブラックカーラント葉抽出物を添加した細胞においてインフルエンザ感染初期の抵抗性を増大することが示唆されている 7)

● 血流改善作用(果実)
 高脂肪食を与えたサルの試験において、高脂肪食のみを与えたサルの血液の濾過性が悪化したのに対し、高脂肪食とブラックカーラント果実抽出物を与えたサルは濾過性の悪化が抑制されたことが報告されている8)

● 抗炎症作用(葉)
 前脚にカラゲニンを注入された炎症モデルラットを用いた試験において、注入前にブラックカーラント葉抽出物を経口投与したラットは、コントロール群と比べて浮腫の誘発が抑制されることが確認されている9)
 また、ブラックカーラントの葉に含まれるプロデルフィニジン類は、ヒト軟骨細胞を用いた試験において、骨関節症に有効であることを示唆している10)

------------------------

sub_list.gif効能(臨床試験)

○ 視覚機能改善作用(果実)11) 12)
 健常な12人の被験者にブラックカーラント果実抽出物を摂取させ、摂取2時間後の暗所閾値の測定を行 った。この結果、アントシアニン50mg投与群で、偽薬群と比較して有意に暗順応が改善されていることが認められた(表1)。

表1 ブラックカーラント果実抽出物の暗順応改善効果

摂取量

暗所闘値 log asb (apostilb)、平均± SD ; (p値)

mg/人

摂取前

摂取後

変化量

p値

偽薬

2.056±0.209
(1.000)

2.018±0.218
(1.000)

-0.038±0.106
(1.000)

0.244

12.5

2.026±0.170
(0.457)

2.004±0.195
(0.751)

-0.023±0.138
(0.733)

0.538

25

2.016±0.170
(0.234)

1.980±0.197
(0.264)

-0.037±0.012
(0.983)

0.280

50

2.038±0.186
(0.686)

1.923±0.167
(0.014)

-0.037±0.112
(0.171)

0.011

※1 括弧内は縦の各カラムで偽薬群を標準として統計的p値を示す
※2 同一摂取量の摂取前と摂取後で比較したときの統計的p値を示す
 また健常な21人を被験者に2時間のパソコン作業(視覚負荷作業)を行わせたところ、ブラックカーラント果実抽出物投与群は偽薬群に比べ、レンズ屈折値の低下が抑制されており、パソコン作業による一時的な仮性近視が緩和されているのが認められた。また、パソコン作業による眼精疲労に関する自覚症状も有意に改善されているのが認められた。

○ 酸化ストレス抑制および筋肉損傷回復プロセス(果実)13)
 健常成人10名(男女各5名)の被験者に、カシス・アントシアニンを含む市販のカシス抽出パウダーを30分間の運動開始直前と直後に120 mgずつ、計240 mg摂取させてカシス抽出物の運動に対する機能性を検証する二重盲検法臨床実験を行った。
 その結果、酸化ストレスが抑制され、運動に起因する急性炎症反応を強化し、病原体の攻撃や筋肉損傷に対抗しうる免疫反応が促進され、体の回復と筋肉損傷修復が早まることが示唆された。

hb16-03.gif
図3 タンパク質カルボニルの経時的変化        図4 クレアチンキナーゼの経時的変化

安全性_同意後

果実はジュースとして愛飲されており安全性は高いと考えられる。

引用文献・参考文献

1) Traitler H. Lipids, 19, 923 (1984)
2) Slimestad R. et al., J. Agric. Food. Chem., 50, 3228 (2002)
3) Tits M. et al., Journal of Pharmaceutical &Biomedical Analysis.,10, 1097 (1992)
4) Matsumoto H. et al., J. Agric. Food. Chem.,51, 3560 (2003)
5) Knox Y. M. et al., Phytother. Res., 17, 120 (2003)
6) Knox Y. M. et al., Phytother. Res., 17, 609 (2003)
7) Christina E.et al., PLOS ONE, 8 , 5 , e63657 (2013)
8) Millet J. et al., J. Pharmacol.,14, 439 (1984)
9) Declume C. et al., Journal Ethno pharmacology,27, 91 (1989)
10) Garbacki N. et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol,365, 434 (2002)
11) Nakanishi H. et al., Alter. Med. Rev,5553(2000)
12) 平山匡夫ら, 食品工業 ,44, 56 (2001)
13) Dr Roger H.et al., Foodstyle21,15, 3 (2011)