薬業時報
昭和26年6月

ルチンの薬理と応用(3)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【放射線傷害】

〔放射線傷害〕
1947年にグリフィス等は過度の放射の結果の一つとして毛細血管の脆弱度が増加することを発見し、ラッテで放射作用に対するルチンの効果を発見した。すべての動物は1本の足に1回2385γだけ放射線を与えられた。同時に動物の半数にはルチン20ミリグラムが小丸薬の形で、腸壁の横面に添うて差し込まれた。この操作は3日毎に36日間繰り返えされた。試験進行中両群の間に重要な相違はなかったが、その後21乃至25日でルチン処置を受けた12匹は正常に返ったが、対象群はこれに反し35日経過後対象群の11匹とルチン処置の2匹がなお正常でない足を示した。ルチンは放射後回復する時間を速める様に想われる、としている。
レッカー及びフィールド(1948年)は犬に対するX線効果を実験した。25匹宛の2群が全身にX線放射中量350γを1回与えられた。1群は放射前1週間前からルチン50ミリグラムを毎日与えられ実験中続けられた。対象群中16匹はX線放射後13-30日で死んだ。ルチン処置群は、X線放射後16、28、31日目に各1匹宛死んだ、死んだ対象群は広範囲なエキモージス及び肺及び腸内出血を示した。ルチン群で死んだ3頭の中2頭には特徴のある広がった出血が起こっていた。生存した22頭は、放射後40乃至60日間観察されたが溢血等の異常なく、解剖の所見も同様であった。対象の生存動物3頭は、皮下溢血及び腸出血が出現していた。ルチンを与えられた犬の中数頭は劇しいトロンボサイトペニア及びロイコペニアを現したが、10乃至14日後に回復した。対象群は此等の条件から殆んど回復しなかった。フィールド及びレッカーは更に広範囲に渉る種々などビタミンP物質(ルチン、ヘスペリヂン、ヘルペリヂンメチルカルコン、エスクリン、及レモン皮製剤)に関する研究の結果を報告した。X線の中等量放射でヘスペリヂン及レモン皮製剤は若干の防護力を示したが、ルチンよりは少なかった。メチルカルコン、エスクリンビタミンCは働きがなかった。700-750γを与えられたラッテは防護されなかった。完全な致命的な放射線量(450γ)が与えられた時にルチン療法が臨床的症状又は死亡率を明らかに減少することを決定するのに失敗したと報告している。コーン等(1948年)はルチンで処置したラッテに対するX線放射の結果を研究し、ルチンは人又はラッテの血液の凝固時間に作用がなく又ヘパリンの働きを妨げもしないと云う結果を得たが、同量を用いた時、凝固を妨げるトルイヂンブリユーの反ヘパリン作用に対抗する結果を得た。クロンカイト等(1949、50年)は原子放射線の特別な効果について細く論証しているが、二十日鼠の試験ではルチンはX線放射の結果に対し動物を防護することが出来なかったと報告している。クラーク等(1948年)は、カルシウムフラボネートと称するレモン皮から作った水溶製剤を用い、モルモットに220-225γ放射した。対象動物の67%その内50%は13日以内に死んだ、一方処置動物は35%死んだが13日以内に死んだのは1頭もいなかった。処置した動物の出血症状は明らかに対象のものよりは少なかった。ハレー及ハリス(1950年)はモルモットのX線放射に対する血液学的感応を研究し、血液の凝固時間の明らかな増加を見出し、それは多分血球板の減少した数に相関関係があるのであろうとしている。

ソコロフ等(1950年)は、1回だけ800γを英国褐色種ラッテに放射した。レモンから採ったビタミンP製剤で防護されたラッテは対象よりはより低い死亡率を示した。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)