薬業時報
昭和26年7月4日

ルチンの薬理と応用(4)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【エビネフリン】

〔エビネフリン〕
1941年にラボーレー及びノイマンが、ビタミンP作用についての早期の試験結果を公刊したが、それによると毛細血管の透過性をコントロールする性質は、前毛細血管の緊張の結果に基づくことに違いないこと、及びこの効果はシムパシンの介在を通じ明示することができることを仮定し、彼等はビタミンPによるプレザーベーションオプシムパシンの存在を探求した。ヘスペリジンを除いたオレンジの純粋エキスは試験管内で強くエピネフリンの酸化を妨げた。彼等はオレンヂエキスの中にフラボノイドの存在を予期し、フラボノイドの効果を試験した結果、ケルチトリン、ルチン及びナリンギンの順序でエピネフリンの酸化を抑制する効力のあることを発見した。化学的の成績は薬理学的データで指示された。オレンジエキス及びフラボノールの誘導体は、分離したモルモットの腸及び精嚢でエピネフリンの働きを引き伸ばした。犬において予めなされたケルチトリンの静脈注射は、エピネフリンの注射の効果を引き伸ばし且つベプドンの注射に後続する衝撃の症状を消去した。

ラボーレーは同年更に、エピネフリンに対する、ある種フラボノイドの反酸化作用に関するデータを示した第二報を公刊したが、それによると毛細血管作用がその故とすることが出来る全ての物質の間に化学構造の共通したものがないように見えるとした。

ルチンのエピネフリンを節約する働きは、ウィルソン、モルタロチー及びデエズ(1947年)によって研究された。これ等の人々は腸の小切れを浸してある液体中にルチンを加え、モルモットの結腸に対するエビネフリンの効果の明確な延長を見出した。

クラーク及びガイスマン(1948年)は、エピネフリンの酸化を防止することに基づいた試験方法を発展させた。それによって彼等はオルトデイヒドロオキシフエーリック化合物及び金属錯監のある数を研究した。彼等はオルトヒドロキシル群は、遊離していなければならないことを、ヘスペリジンの如きメチル化された誘導体がほとんど作用を缺くことから報告した。彼等はこの作用は化合物の還元力即ちヒノン形及び金属と錯合し又はシエレーティングする能力に関係があることを示唆した。而してエピネフリンの反酸化の性質及び毛細血管脆弱症(透過性及び濾過性)は、ビタミンPの効果が興える限りでは、独特の関係があることは疑わしいと結論した。この人々は更に完成したデータ(1949年)を発表し、68の化合物から得た結果を報告し、定量的にエピネフリンに能力を附典する力を計算した。約17種の化合物がルチンよりもより大きな能力を附典する力を示した。

ウィルソン及びデエズ(1949年)は、化学組成をエピネフリンを保護する働きとの間の関係について、第三位置の炭素における配糖体の連鎖は活動力を制限しないこと、第七位置の炭素連鎖で活動力を増すが同位置のヒドロキシルのメチル化は活動力は第二位置と第三位置の炭素の間の二重結合で増されること及びフエニールリングの遊離のオルトヒドロキシルもまた活動力を増すことを発表した。

反酸化理論は、最近ソコロフ及びレッヅ(1949年)により生理学的基礎から批判された。それによれば、ラボーレーの仕事の主因な考え方は、ビタミンP因子はアドレナリンの酸化を遅らせること及びその必要性が毛細血管透過性に関係するだけに終わっていることである。換言すればビタミンP因子は、毛細血管壁又は毛細血管透過性の何れにも直接の効果を持たないのである。ソコロフ等はラボーレー等の学説を支持する為に新しい證據を発見しようと試みた。しかし彼等は、アドレナリンが毛細血管の調子を維持することを証明しなかった許りでなく、又アドレナリンが毛細血管の抵抗を増し又は毛細血管の透過性を減らすことを実証することができなかった許りでなく、アドレナリンの酸化を、ビタミンPが遅らせる働きに関する彼らの土台となっている見解帖の擁護を不十分とする證據が出た。バーロート及びコテレウが、ビタミンP因子は試験管内で、アスコルビン酸及びアドレナリンの酸化を遅らせることを証明したのは真実である。だが生体内でビタミンP因子の働きが同様であるということについてそれ以上の證據は彼らによっては持ち出されなかった。

血管に対するアドレナリンの血管収縮効果と細血管脆弱性の現象との間を結ぶに役立つ十分な證據はなかった。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)