薬業時報
昭和26年8月1日

ルチンの薬理と応用(8)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【血液の凝固効果・毛細血管拡張・犬の出血・シュワルツマン現象・心臓効果】

〔血液の凝固効果〕
プルジアン、ムンフ及びボルフエ(1948年)は、白ラッテの血液の凝固時間に関するルチン、胆汁塩及びヂクマロールの効果について研究した。経口的な用法でルチン及び胆汁 は血液の凝固時間を引下げたが、ヂクマロールは増加した。

コーン、ロビネット及びクップ(1948年)は、白ラッテに対する放射の結果の研究で、人間又はラッテの血液の正常な凝結時間にルチンが働く証拠を得ることは出来なかった。

フィールド及びレッカース(1948年)は、放射後の犬の血液の凝結時間がルチンを用うると否とで著しく増加しなかったことを発見した。

アルカリーリザアブ、レコック(1948年)は、家兎に静脈注射した際のルチンの及びアルファーエピカテヒンの血漿のアルカリ性保有に関する結果を研究した。ルチン0.3ミリグラム及びエピカテヒン10ミリグラムはアルカリリザアブを増加した。ビタミンKはリザアブを増加しなかった。

〔毛細血管拡張〕
ハアレイ、クラアク及びガイスマン(1947年)は、チアムバアス及びツワイフアハのラフト メソアツベンヂックス プレパレーションを用いて、毛細管運動に対する数種のフラボノイドの効果を研究した。彼等はルチン及びそのサクシネートは働きなく、ルチンのフタール酸塩は僅に働きあり、カテヒンが最も作用が強いことを見出した。ケムメル(1936年)は蛙の毛細血管の収縮を起すことを見出しており、ソコウレイ及びチムメル(1938年)はケルチトリンを或る一般に振りまく実験で、脈管収縮を報告している。だがフルウマン及びクリスモン(1948年)は、動脈を包含する抹消の脈管収縮が霜焼けの結果から、家兎の足の防護要素たり得ることは疑わしいと考えた。

〔犬の出血〕
ヘレルスタイン等(1949年)は、犬で実験的悪性高血圧の出血現象に対するルチンの効果を研究した。尿毒症を伴った急性高血圧は腎臓動脈の両側の結紮によって犬16頭に生じた。全動物は臨床的な尿毒症及高血圧を発し三乃至る六日で死んだ。消化管域、心臓、膵臓、膀胱、横隔膜、脾臓及び副腎に甚だしい心筋の炎症及壊死を伴って、対象動物及びルチン200ミリグラムを、手術後及び手術前3日与えたものに起っていた。手術十日間ルチンを与えた犬は心筋症と出血変化が完全になかった。著者等は高血圧に対するルチンの作用の矛盾した報告は、研究動物に対するルチンの相対的な不足に基くと考えている。

〔シュワルツマン現象〕
著しく増加した毛細血管脆弱症のあるシュワルツマン作用に対するアンチヒスタミン及びフラボノイドの影響が、マラツカ及びアイビイ(1948年)によって研究された。ルチン、ヘスペリヂン及びシトリンは現象を防止した。

〔心臓効果〕
赤松氏(1929年)はルチン及び他の四つのフラボノイドの作用を生体蛙心臓で研究したすべての場合心臓鼓動の振幅が増加し、脈拍の割合は減少し而して分間量は増加した。フオンジエネイ及びチムメル(1936年)はケルセチン及びケルチトリンが健康な蛙心臓を僅に増加する働きを持つことを報告している。この両者は蛙心臓でクロロホルム、ウレタン及び塩酸キニーネの毒作用に拮抗し、ラムネチンも同様な作用(1938年)を持った。ヘスペリヂンは心臓作用を下げ、そして酪酸の圧えつける効果に拮抗しなかった。エージエネエ(1947年)は、ケルセチン及びケルチトリンが蛙心臓でメチルアルコールの毒作用に拮抗し、又ラムネチンは更に弱く拮抗することを見出した。フオンジエネエ、メーエス、チムメル及びソコウレエ(1937年)は、哺乳動物特にモルモットでこれ等の実験を繰り返えそうと企画し、不規則且つ矛盾したデーターを得た。心臓に対する働きは時として毒性を示し、そして他の場合には好ましくなかった。而して半分の場合には効果がないことが気付かれた。彼等はケルセチンケルチトリン及びフオルシチアエキス(ルチン)を用いた。チムメル(1936年)は、フオシチア配糖 (ルチン)は他のフラボノールと同様、蛙心臓に働いたと報告した。デエヅ(1948年)はルチンで蛙心臓の明確な興奮を得た。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)