薬業時報
昭和26年7月25日

ルチンの薬理と応用(7)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【霜焼け・広散酵素・ヒスチジンデカルボキシラーゼ及びヒヨリンアセチラーゼ・ある薬剤の毛細血管効果に対する拮抗作用】

〔霜焼け〕
フールマン及びクリスモン一九四八年の仕事は、家兎の実験的霜焼けに対するルチン療法の価値を論証した。第五蹠骨の結節の水平まで氷点下五五度の液体中に浸した。対象十五匹の中十一匹は露出した部分を完全に失い、四匹は蹠の肉趾のすべてを失った。ルチンで処置した(経口的に一日量五〇乃至一〇〇ミリグラム投与)十匹中九匹は趾を失い、一匹は趾と足の一センチメートルばかりを加えて失った。ルチンは家兎が耳の霜焼け後に組織を失うことを防ぐ効果がなかった。ただルチンで処置した動物は、処置しない動物よりは耳の毛細血管中の鬱血を拡げることが遅かった。

アムブロース、ロビンス及びデエズ(一九五〇年)はフールマン及びクリスモンの報告の結果を確かめた。 してある程度の防護は、ほかのフラボノイド即ちケルチトリン、ケルセチン、メチルヘスペリデイン、二・三ヂヒドロケルセチン及び乾葡萄の種のエキスで与えられることを示した。

〔広散酵素〕
レビタン(一九四八、九年)はビタミンPの二つの型であるルチン及びエスクリン、ヒアロウロニダーゼ、アゾゼールム及び食塩水の広がることを抑制すると称えだした。

エステル(一九四九年)は、解剖前四日間、プロピレングリマール又は食塩水でルチン二百ミリグラムを胃導入管を用い又は腹腔内的に白ラッテに与えてレビタンの説を確かめようとしたが出来なかった。

バイラー及マルチン(一九四七年)は、ルチンが一cc中一ミリグラムの濃度でヒアロウロニダーゼの働きを抑制したことを報告したルチンがアスコルビン酸と混合されたときこと働きは一層高められたとしている。

〔ヒスチヂンデカルポキシラーゼ及びヒヨリンアセチラーゼ〕
マルチン等(一九四九年)は、ビタミンP化合物のヒスチヂンデカルポキシラーゼに対する抑制作用を試験し、ルチン及エスクリンは無力であることを見出したところがそのアグリコンであるケルセチン及びエスクレチンは作用があった。バイラー及共同者(一九五〇年)は、アセチールヒヨリナーゼに対する一連のフラボノイドの抑制作用を研究した。ケルセチン及エスクレチンは、それ等の配糖体であるルチン及びエスクリンより一層多くの働きを持っていた。

〔ある薬剤の毛細血管効果に対する拮抗作用〕
リチャード及びクエーター(一九四八年)は、酸性亜硫酸曹達及びプロカインの毛細血管効果に対するルチンの拮抗作用を報告した。酸性亜硫酸曹達は、皮下又は筋肉内に与えられたエピネフリン及プロカイン毒性を増加するが、ルチンの静脈注射の後では増加は非常に減ぜられる。ハーレー及びローデス(一九五〇年)は毛細血管透過性を決定する方法に対する土台としてこの観察を用いた。彼等は一連のフラボノイドを本方法で試験しその結果を報告した。だが彼等の計測がビタミンPの働きに相関するかどうかは疑わしい。

クラーク(一九四八年)はラッテを使ってやった試験ではルチンとヂクマロールとの間の拮抗作用を論証することは出来なかった。

マルチン及スワイン(一九四九年)もまたラッテを使ったが、ヂクマロールとルチン及dカテヒンとの間の拮抗作用を見出した。アスコルビン酸にもまた同作用があった。ヘスペリヂンはヂクマロールに拮抗しなかった。アスコルビン酸とdカテヒンとの協力作用が観察されたがアンチヒアロウロニダーゼ作用もまた見出された又ルチンが組織に存在するときエピネフリンの反酸化作用も見出された。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)