研究報告

ルチン

ルチンに関する研究発表をご紹介いたします。

ルチンの薬理と応用(完) -3.臨床試験【毛細血管透過度・出血性歯齦・偏頭痛・血友病】-

薬業時報
昭和26年9月12日

ルチンの薬理と応用(完)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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3.臨床試験 【細血管透過度・出血性歯齦・偏頭痛・血友病】

網膜出血に対するルチンの用法の完全な考え方は、ホウレンホルスト及びワゲナア(1949年)によって公刊された。その中で文献の批判がなされた。彼等はロウドリグエツツ及びルウトの陳述書を明らかに賛成して引用した。それは「吾々の研究は糖尿性網膜炎を伴う全ての人は実際上決定的に毛細血管抵抗が低いことを示した。吾々はルチンの一層の試みの望みあることを示唆する。尚一層重要なことはルチンの薬理学上の今後の研究を通じて吾々が長期間の糖尿病患者の網膜に関する毛細血管損傷及び他の悪くなった併発症対するルチンの早い用い方の適応症を確かめ得ることの可能性である」と述べている。

〔毛細血管透過度〕
毛細血管透過度は毛細血管脆弱度と共に血管壁の欠陥を包藏するが、透過度においては壁の欠損はなく且つ出血がない。増加した毛細血管はありのままの壁を通じて液体の異常な通過によって特徴付けられるが、血液の細胞成分は残される。毛細血管透過度は数種の方法で測りえ得る。次の二つの方法はフラボノイドの効果を決定するに用いられた。第一は皮下注射した色素の拡散を観察することによって、第二はある刺激した面積における静脈注射した色素の出現に対して要求される時間を観察することによるのである。(ボール等1949年)

第一の方法は、グリフィスによって進歩した試験に用いられ、ムクマスターの方法から採用されたものであって、色素パテントブリューが前膞に皮下注射され而して、その拡散15分間注意させる。もしも色素がその時に4分の3インチより余計に広がったならばリンパ液の増加した流れを示すと、そして間接的に透過度増加を示すと考えられる。グリフィス及びリンダウエル(1949年)により次の報告がなされた。毛細血管欠陥の患者279名の中81名は増加した毛細血管脆弱度と増加した皮膚のリンパ液流の両方を持ち、31名は増加した皮膚のリンパ液流だけを持っていた。異常透過性はこれらの著者によってルチンで容易に癒されていた。

アムブロウス及びデエヅ(1947年)は、白兎を用いて第二の方法を適用している、各動物は1%トリフアンブリュー2ccを端の耳静脈に注射された。約5分後に下腹部のある面積がクロロホルムで刺激されたパアキロ100~200mgのルチンを用いた後は、色が現れるまでに要する時間の決定的増加があった。結果はパアキロ50mgの容量の後ではより少なく示された。

クツフマイステル(1949年)は本質的な高血圧急性絲毬体腎炎、リウマチス性紫斑、悪性腎硬化、衰弱性浮腫及び中心性浮腫の例で毛細血管透過性を減ずるにルチンを用いて成功した、ルチンを中止したときに再発が起こった。

クツキンスキー(1949年)は、蛙及び二十日鼠の後足にチロウデ液を1万分の1又は5千分の1の濃度のルチンを添加しもしく添加せずして灌いだ。二つの場合において、ルチンを用いた動物は対象よりも明らかに浮腫が少なかった。彼等は毛細血管の透過性をルチンが妨げると結論したヅウボント及びヘンネスとの一緒の最近の文献(1949年)でこれらの判定を詳述している。

〔出血性歯齦〕
ストレアン(1949年)は、1日3回ルチン30mg及びアスコルビン酸50mg宛の合剤を、歯を磨いた爲又は食物を噛んだ爲歯齦出血をしている21目煮の患者に与えた。7日の後12名出血が止まった。数は2週間後に15名に増加した。1ヵ月後には18名となった。3名は難治で残った。

〔偏頭痛〕
ルチンはアンチヒスタミックを伴いアレルギーが疑われたところの偏頭痛数例に用いて結果が良かった。この使用法に関する公の文献には未だ接しない。

〔血友病〕
ルチンは患者の指図の下に血友病の症状の激しさを和らげる為に用いられた。16人の患者は二乃至五年間連続した期間観察の下にあった。主な効果は関節の出血の減少、痛みの軽減、脈拍の頻度及び外傷後の出血限度の減少並に輸血法に対するの必要僅かな例であった。処置の下にあった子供達の親はルチンの処置後に患者の状態が非常に改善し過ちない処置の継続を主張した。全部ではないがこの例の多くは患者は他の処置を今でも受けておらない。最初に学校に登校することを妨げられた多くの子供たちは病気で休むのは最小限で出席を続けることが出来た。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(9) -3.臨床試験【毛細血管脆弱度増加症】 -

薬業時報
昭和26年8月

ルチンの薬理と応用(9)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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3.臨床試験 【毛細血管脆弱度増加症】

〔毛細血管脆弱度増加症〕
毛細血管脆弱度の増加症を癒すためにルチンを用うることは、1943年グリフィス、リンダウエル及びコーチによって発表された、ゴスリンのポシチイブプレシアメソッドで決定した毛細血管脆弱度増加症によって、複雑にされた高血圧の患者14名にルチンが使用された。その内11名の患者は12~16ヵ月続けられた。八人は毛細血管脆弱度増加症が2ヵ月以内に正常となった。他の3人は増加した儘であった。その中の一人は治療を始めて4ヵ月後半身不随を起した。残りの10人は観察の期間中何等の併発症を起さなかった二人の患者は毛細血管脆弱症が正常となった後、ルチンの服用を止めたところ6週間以内に脆弱度が再び増加した。ルチンを再び服用したので1ヵ月以内に正常に還った。引続いた報告でグリフィス(1947年)並にグリフィス及びリンダウエル(1947年)は、さらに多数の患者に対する結果を報告したが、それによると当初に毛細血管の欠陥を持った者の88%がルチン療法の後正常に還った。毛細血管の欠陥を持つ高血圧患者により多く宣告された網 出血又は卒中の傾向は欠陥がルチンによって訂された後には、毛細血管の欠陥なき患者に見られる数字と比較し得る数字に迄減少した。処理の患者の表は別表第一、第二の通りである。

(第一表)毛細血管の欠陥に対し処置を受けた患者の併発症の発生範囲
 実験の当初増加していた450名の患者を16ヵ月取扱った結果

卒中網膜出血死亡
毛細血管脆弱度又は淋巴の流れが正常に回復した者7
(1.5%)
2
(0.4%)
14
(3.1%)
増加したままの者191213
測定しなかった者15*326**
41
(9.1%)
17
(3.8%)
53
(11.8%)

 実験の当初正常であった361名の患者の中では

卒中網膜出血死亡
正常5
(1.4%)
3
(0.8%)
13
(3.6%)

*内8名はルチンを用いず
**内17名はルチンを用いず

群名前療法毛細血管
の脆弱度
皮膚の
リンパの流れ
ロダン
又は
ルチン療法
*試験を繰り返した
人数
繰り返した
試験の患者百分比
増加  正常
1ナシ正常正常ナシ59
44
0   100
0   100
2ナシ正常正常ロダン88
36
18   82
17   83
(イ)
3
ルチン正常正常ロダン62
21
18   82
19   81
(ロ)
4
ロダン増加増加ロダン廃止6
1
0   100
0   100
(ロ)
5
ロダン増加増加ルチンを開始
又は増加
20
9
0   100
0   100

*  試験の繰り返しは少なくとも六週間離して行われた、第一、二及び三群の患者に対する試験の繰り返し回数は平均2.7回である
(イ) これらの患者は最初に脆弱度又は淋巴流の何れか又は両方の増加を持っていたのだが、ルチン療法で正常に還った
(ロ) 第二及三群からの患者

同様な結果が、シャノー(1946年)ツファス(1947年)ハイン(1948年)及びグチエレッツ(1949年)から報告された。ドネガン及びトーマス(1948年)は指数は正常の状態には帰らなかったが、ルチン療法に続く容態の改善を観察した。網 症を伴った糖尿病は一層難治ではあるが高血圧は順調になる。而して網 症の61例中43例がルチン療法の継続でこの条件の改善を示した。エドレス氏病の9例中8例は改善され毛細血管脆弱症は殆ど正常に還った。

マクマアヌス及びランドリガン(1947年)は、減圧法(水銀柱マイナス20センチメートルで一分間適用)を用いて毛細血管脆弱度を決定し、10患者に4週間ルチンを用い、その間5患者を対象とした。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(8) -2.薬理作用【血液の凝固効果・毛細血管拡張・犬の出血・シュワルツマン現象・心臓効果】-

薬業時報
昭和26年8月1日

ルチンの薬理と応用(8)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【血液の凝固効果・毛細血管拡張・犬の出血・シュワルツマン現象・心臓効果】

〔血液の凝固効果〕
プルジアン、ムンフ及びボルフエ(1948年)は、白ラッテの血液の凝固時間に関するルチン、胆汁塩及びヂクマロールの効果について研究した。経口的な用法でルチン及び胆汁 は血液の凝固時間を引下げたが、ヂクマロールは増加した。

コーン、ロビネット及びクップ(1948年)は、白ラッテに対する放射の結果の研究で、人間又はラッテの血液の正常な凝結時間にルチンが働く証拠を得ることは出来なかった。

フィールド及びレッカース(1948年)は、放射後の犬の血液の凝結時間がルチンを用うると否とで著しく増加しなかったことを発見した。

アルカリーリザアブ、レコック(1948年)は、家兎に静脈注射した際のルチンの及びアルファーエピカテヒンの血漿のアルカリ性保有に関する結果を研究した。ルチン0.3ミリグラム及びエピカテヒン10ミリグラムはアルカリリザアブを増加した。ビタミンKはリザアブを増加しなかった。

〔毛細血管拡張〕
ハアレイ、クラアク及びガイスマン(1947年)は、チアムバアス及びツワイフアハのラフト メソアツベンヂックス プレパレーションを用いて、毛細管運動に対する数種のフラボノイドの効果を研究した。彼等はルチン及びそのサクシネートは働きなく、ルチンのフタール酸塩は僅に働きあり、カテヒンが最も作用が強いことを見出した。ケムメル(1936年)は蛙の毛細血管の収縮を起すことを見出しており、ソコウレイ及びチムメル(1938年)はケルチトリンを或る一般に振りまく実験で、脈管収縮を報告している。だがフルウマン及びクリスモン(1948年)は、動脈を包含する抹消の脈管収縮が霜焼けの結果から、家兎の足の防護要素たり得ることは疑わしいと考えた。

〔犬の出血〕
ヘレルスタイン等(1949年)は、犬で実験的悪性高血圧の出血現象に対するルチンの効果を研究した。尿毒症を伴った急性高血圧は腎臓動脈の両側の結紮によって犬16頭に生じた。全動物は臨床的な尿毒症及高血圧を発し三乃至る六日で死んだ。消化管域、心臓、膵臓、膀胱、横隔膜、脾臓及び副腎に甚だしい心筋の炎症及壊死を伴って、対象動物及びルチン200ミリグラムを、手術後及び手術前3日与えたものに起っていた。手術十日間ルチンを与えた犬は心筋症と出血変化が完全になかった。著者等は高血圧に対するルチンの作用の矛盾した報告は、研究動物に対するルチンの相対的な不足に基くと考えている。

〔シュワルツマン現象〕
著しく増加した毛細血管脆弱症のあるシュワルツマン作用に対するアンチヒスタミン及びフラボノイドの影響が、マラツカ及びアイビイ(1948年)によって研究された。ルチン、ヘスペリヂン及びシトリンは現象を防止した。

〔心臓効果〕
赤松氏(1929年)はルチン及び他の四つのフラボノイドの作用を生体蛙心臓で研究したすべての場合心臓鼓動の振幅が増加し、脈拍の割合は減少し而して分間量は増加した。フオンジエネイ及びチムメル(1936年)はケルセチン及びケルチトリンが健康な蛙心臓を僅に増加する働きを持つことを報告している。この両者は蛙心臓でクロロホルム、ウレタン及び塩酸キニーネの毒作用に拮抗し、ラムネチンも同様な作用(1938年)を持った。ヘスペリヂンは心臓作用を下げ、そして酪酸の圧えつける効果に拮抗しなかった。エージエネエ(1947年)は、ケルセチン及びケルチトリンが蛙心臓でメチルアルコールの毒作用に拮抗し、又ラムネチンは更に弱く拮抗することを見出した。フオンジエネエ、メーエス、チムメル及びソコウレエ(1937年)は、哺乳動物特にモルモットでこれ等の実験を繰り返えそうと企画し、不規則且つ矛盾したデーターを得た。心臓に対する働きは時として毒性を示し、そして他の場合には好ましくなかった。而して半分の場合には効果がないことが気付かれた。彼等はケルセチンケルチトリン及びフオルシチアエキス(ルチン)を用いた。チムメル(1936年)は、フオシチア配糖 (ルチン)は他のフラボノールと同様、蛙心臓に働いたと報告した。デエヅ(1948年)はルチンで蛙心臓の明確な興奮を得た。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(7) -2.薬理作用【霜焼け・広散酵素・ヒスチジンデカルボキシラーゼ及びヒヨリンアセチラーゼ・ある薬剤の毛細血管効果に対する拮抗作用】-

薬業時報
昭和26年7月25日

ルチンの薬理と応用(7)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【霜焼け・広散酵素・ヒスチジンデカルボキシラーゼ及びヒヨリンアセチラーゼ・ある薬剤の毛細血管効果に対する拮抗作用】

〔霜焼け〕
フールマン及びクリスモン一九四八年の仕事は、家兎の実験的霜焼けに対するルチン療法の価値を論証した。第五蹠骨の結節の水平まで氷点下五五度の液体中に浸した。対象十五匹の中十一匹は露出した部分を完全に失い、四匹は蹠の肉趾のすべてを失った。ルチンで処置した(経口的に一日量五〇乃至一〇〇ミリグラム投与)十匹中九匹は趾を失い、一匹は趾と足の一センチメートルばかりを加えて失った。ルチンは家兎が耳の霜焼け後に組織を失うことを防ぐ効果がなかった。ただルチンで処置した動物は、処置しない動物よりは耳の毛細血管中の鬱血を拡げることが遅かった。

アムブロース、ロビンス及びデエズ(一九五〇年)はフールマン及びクリスモンの報告の結果を確かめた。 してある程度の防護は、ほかのフラボノイド即ちケルチトリン、ケルセチン、メチルヘスペリデイン、二・三ヂヒドロケルセチン及び乾葡萄の種のエキスで与えられることを示した。

〔広散酵素〕
レビタン(一九四八、九年)はビタミンPの二つの型であるルチン及びエスクリン、ヒアロウロニダーゼ、アゾゼールム及び食塩水の広がることを抑制すると称えだした。

エステル(一九四九年)は、解剖前四日間、プロピレングリマール又は食塩水でルチン二百ミリグラムを胃導入管を用い又は腹腔内的に白ラッテに与えてレビタンの説を確かめようとしたが出来なかった。

バイラー及マルチン(一九四七年)は、ルチンが一cc中一ミリグラムの濃度でヒアロウロニダーゼの働きを抑制したことを報告したルチンがアスコルビン酸と混合されたときこと働きは一層高められたとしている。

〔ヒスチヂンデカルポキシラーゼ及びヒヨリンアセチラーゼ〕
マルチン等(一九四九年)は、ビタミンP化合物のヒスチヂンデカルポキシラーゼに対する抑制作用を試験し、ルチン及エスクリンは無力であることを見出したところがそのアグリコンであるケルセチン及びエスクレチンは作用があった。バイラー及共同者(一九五〇年)は、アセチールヒヨリナーゼに対する一連のフラボノイドの抑制作用を研究した。ケルセチン及エスクレチンは、それ等の配糖体であるルチン及びエスクリンより一層多くの働きを持っていた。

〔ある薬剤の毛細血管効果に対する拮抗作用〕
リチャード及びクエーター(一九四八年)は、酸性亜硫酸曹達及びプロカインの毛細血管効果に対するルチンの拮抗作用を報告した。酸性亜硫酸曹達は、皮下又は筋肉内に与えられたエピネフリン及プロカイン毒性を増加するが、ルチンの静脈注射の後では増加は非常に減ぜられる。ハーレー及びローデス(一九五〇年)は毛細血管透過性を決定する方法に対する土台としてこの観察を用いた。彼等は一連のフラボノイドを本方法で試験しその結果を報告した。だが彼等の計測がビタミンPの働きに相関するかどうかは疑わしい。

クラーク(一九四八年)はラッテを使ってやった試験ではルチンとヂクマロールとの間の拮抗作用を論証することは出来なかった。

マルチン及スワイン(一九四九年)もまたラッテを使ったが、ヂクマロールとルチン及dカテヒンとの間の拮抗作用を見出した。アスコルビン酸にもまた同作用があった。ヘスペリヂンはヂクマロールに拮抗しなかった。アスコルビン酸とdカテヒンとの協力作用が観察されたがアンチヒアロウロニダーゼ作用もまた見出された又ルチンが組織に存在するときエピネフリンの反酸化作用も見出された。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
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ルチンの薬理と応用(6) -2.薬理作用【菌の発育阻止作用・抗ウイルス性効果】-

薬業時報
昭和26年7月

ルチンの薬理と応用(6)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【菌の発育阻止作用・抗ウイルス性効果】

〔菌の発育阻止作用〕
コーチ等(1947年)はデイクマロールの菌発育阻止作用に、フラボノイドを加えた効果についてルチン及びケルチトリン竝にアグリコンのケルセチンが、ヂクマロールの菌の発育阻止性を中和しないのみならず、ケルセチンそれ自身が黄色葡萄状球菌に対し相当の毒性を持ち、1cc中0.1mgの濃度で完全に成長を阻止することを観察した。ルチンは菌の発育阻止作用がなかったがケルチトリンは微生物に対して僅かに毒性を示した。この効果はラムノシツドの一部が加水分解で生じたケルセンの少量に基因するのであろう。兎にも角にもルチンがケルセチンの2~3%を含んでいることが知られたから、観察された菌の発育阻止作用は、ラムノシッドそれ自身によって可能性がある。この発表まではフラボノールが菌の発育阻止作用を持つことは知られていなかったのである。

同年の後期にアンデルセン及びペリーは、グリンピース及びコーンステイブカゼインの培地中で、ルチン、ケルチトリン及びケルセチンの効果に関する彼らの研究を公刊した。ボトリウム菌による毒素構成に対し、ケルセチンは80~160PPMの濃度で培地中に広がる毒性を妨げた。ルチンは効果がなかった。又ケルチトリンは1000PPMの濃度で僅かな作用を示した。

マア及びフオンテイン(1948年)は結晶トマチンのアンチビオチイク効果に、ルチン及びケルセチンが拮抗作用を示すことを報告した。トマチンの抑制効果(1cc中0.1mg)はルチン(1cc中0.2mg)及びケルセチン(1cc中0.3mg)に対応した。又トマチン1cc中0.25mgの濃度では、ケルセチン1cc中0.5mgの濃度を要求した。ルチンは1cc中1mgの濃度で効果がなかった。これ等によってフラボノールは微生物の成長に何等の効果を持っていないと結論した。

ブスチンザ及びロペッツ(1948年)は、ケルセチンが黄色葡萄状菌、バクテリアミコシイデス、抗酸菌類(フレイ、恥垢菌、鳥結核菌、人型結核菌)の成長を抑制することを見出した。

コーチ等(1948年)はケルセチンの微生物抑制作用はpH7以上で発揮され、その数字を超えては殆どないことを見出した。pH6.5でケルセチンは1cc中0.075~0.1mgの濃度で完全に黄色及び白色葡萄状球菌、エロバチルスポリミクサ(野菜の分解に寄与する菌)及びブルセラ菌(牛の流産菌)を完全に抑制した。一部分の抑制作用としては連鎖状球菌のD及びE群らに数種のグラム陰性菌の形が得られた。モツレは1cc中0.15mgの濃度で25~30%抑制したが、他の5つのカビには効果がなかった。ケルセチンの作用は血清及び鉄の存在で失われたが、システインの存在ではなかった。ルチン及びケルチトリンは働きがなかった。

〔抗ウイルス性効果〕
カッティング、ドライスバッハ及びネッフ(1949年)は二十日鼠の狂水病ウイルスに対する数種のフラボノイドの予防的作用を研究した。ウイルスは薬品が供給され始めて4日後大脳内部に摂取された。そして薬局は試験の終わるまで続けられた。ケルセチン及びケルチトリンは明確な予防作用を示した。ルチンは前途の望みある結果を与えた即ち対象が21匹中4匹だけ生き残ったに対し14匹が生き残った。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
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ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
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ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(5) -2.薬理作用【ヒスタミン及び過敏症・利尿】-

薬業時報
昭和26年7月11日

ルチンの薬理と応用(5)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【ヒスタミン及び過敏症・利尿】

〔ヒスタミン及び過敏症〕
ウィルソン、モルタロテイ及びデエヅ(1949年)は、ある特別な事情の下にルチン10mgを腹腔内に注射したビタミンP不足の食餌で飼養されたラッテが、ヒスタミン監酸監LD50容量に対し防護されたことを発見した。ルチンがヒスタミンの静脈注射に先立つこと10~30分間に与えられたとき明確な防護が生じた。この現象は、ヒスタミンの注射前35分~65分に、ルチンが与えられたときには起こらなかった。ルチンとヒスタミンとを同時に注射したときは、二つの物質の間に直接な拮抗性がないことを示して、動物に何等の防護の結果を来さなかった。

平松氏(1941年)はビタミンPで、予め動物を処置することにより過敏性を防ぐことを報告したが、データが貧弱すぎたためウィルソン等はこの発見を確かめることは出来なかった。

レイマン、レーター及びネクルス(1947年)は、正常馬血清0.25ccをモルモットの腹腔内に注射し過敏症にして置き、12日後に馬血清の非経口投与でショックを与えた。ショックを与える30~45分前に腹腔内にルチンを与えた動物は、ショックの症状を現さなかったが、対象動物は全部が10分以内に死んだ。ショックを与える60分前にルチンを与えた動物は約15分間で過敏性のショックで死んだ。

ウィルソン、デエヅ(1948年)によればルチン1mgを腹腔内に与えた後、30~45分後にヒスタミンの致死量を与えた所、モルモットは10分以内にヒスタミンショックで死んだ結果を得ている。又クラーク、マツケイ(1950年)はルチン又はケルセチンスルホン酸ナトリウムを与えた後で、ヒスタミン燐酸の毒性が僅かに減少した結果を得たが、他の数種のフラボノイドは無力であった。

レビタン(1948年)は、家兎に2g以上の大量のルチンを与え、しかもヒスタミンの最小致死量に対し動物を防護することに失敗した。同人は又馬血清による感作を防止し得なかったし、又大量のルチンで家兎の過敏作用を防止し得なかった。

アルジョナア等(1949年)は、ルチンでモルモットの過敏性ショックを防ぎ得なかった。ヘブチング(1949年)もまたルチンでモルモットのヒスタミンショックを防ぎ得なかった。 ロート、シェパード(1948年)は馬血清によるショックに対するルチンの作用を研究した。モルモットは、1~20mgのルチンの腹腔内注射で防護されなかった。ただ同じ条件の下で卵白に対する僅かな防護力が認められたヒスタミンのLD100用量がモルモットに与えられたとき、ルチン10mgでは何等の防護作用を認めなかった。

〔利尿〕
フラボノールの利尿効果の可能性の問題はこの分野の数名の研究者の注意を引き起こした。赤松氏(1931年)は、家兎にルチン0.3~0.5gパーキロを与え、1日に排泄した尿の量の著しい増加を観察した。増加の現象はルチンの投与期間認められ、ルチン投与を止めたとき尿量はもとに還った。同士はまたルチンとカフェイン、プリン、テオフィリンの間に相乗作用があることを報告している。ルチンとカフェイン又はテオフィリンの合剤は、各薬剤単独よりも、一層強く且つ引き続いた利尿作用があった。

福田氏及び河野氏(1928年)も、家兎を用いてルチンを含む数種のフラボノールの利尿作用を研究し、試験したすべての物質が活発な利尿剤であったとしている。又マスクル、パリス(1936年)は犬で反対の結果を得ている。

チムメル(1936年)は、ルチン液の注射でラッテに利尿効果があったが、蛙、モルモット、家兎又は猫では、効果がなかった。食肉類の動物は、尿中に監化第二鉄で緑色を呈する物質を排泄するが、草食動物では、このような反応がなかったことを報告している。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(4) -2.薬理作用【エビネフリン】-

薬業時報
昭和26年7月4日

ルチンの薬理と応用(4)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【エビネフリン】

〔エビネフリン〕
1941年にラボーレー及びノイマンが、ビタミンP作用についての早期の試験結果を公刊したが、それによると毛細血管の透過性をコントロールする性質は、前毛細血管の緊張の結果に基づくことに違いないこと、及びこの効果はシムパシンの介在を通じ明示することができることを仮定し、彼等はビタミンPによるプレザーベーションオプシムパシンの存在を探求した。ヘスペリジンを除いたオレンジの純粋エキスは試験管内で強くエピネフリンの酸化を妨げた。彼等はオレンヂエキスの中にフラボノイドの存在を予期し、フラボノイドの効果を試験した結果、ケルチトリン、ルチン及びナリンギンの順序でエピネフリンの酸化を抑制する効力のあることを発見した。化学的の成績は薬理学的データで指示された。オレンジエキス及びフラボノールの誘導体は、分離したモルモットの腸及び精嚢でエピネフリンの働きを引き伸ばした。犬において予めなされたケルチトリンの静脈注射は、エピネフリンの注射の効果を引き伸ばし且つベプドンの注射に後続する衝撃の症状を消去した。

ラボーレーは同年更に、エピネフリンに対する、ある種フラボノイドの反酸化作用に関するデータを示した第二報を公刊したが、それによると毛細血管作用がその故とすることが出来る全ての物質の間に化学構造の共通したものがないように見えるとした。

ルチンのエピネフリンを節約する働きは、ウィルソン、モルタロチー及びデエズ(1947年)によって研究された。これ等の人々は腸の小切れを浸してある液体中にルチンを加え、モルモットの結腸に対するエビネフリンの効果の明確な延長を見出した。

クラーク及びガイスマン(1948年)は、エピネフリンの酸化を防止することに基づいた試験方法を発展させた。それによって彼等はオルトデイヒドロオキシフエーリック化合物及び金属錯監のある数を研究した。彼等はオルトヒドロキシル群は、遊離していなければならないことを、ヘスペリジンの如きメチル化された誘導体がほとんど作用を缺くことから報告した。彼等はこの作用は化合物の還元力即ちヒノン形及び金属と錯合し又はシエレーティングする能力に関係があることを示唆した。而してエピネフリンの反酸化の性質及び毛細血管脆弱症(透過性及び濾過性)は、ビタミンPの効果が興える限りでは、独特の関係があることは疑わしいと結論した。この人々は更に完成したデータ(1949年)を発表し、68の化合物から得た結果を報告し、定量的にエピネフリンに能力を附典する力を計算した。約17種の化合物がルチンよりもより大きな能力を附典する力を示した。

ウィルソン及びデエズ(1949年)は、化学組成をエピネフリンを保護する働きとの間の関係について、第三位置の炭素における配糖体の連鎖は活動力を制限しないこと、第七位置の炭素連鎖で活動力を増すが同位置のヒドロキシルのメチル化は活動力は第二位置と第三位置の炭素の間の二重結合で増されること及びフエニールリングの遊離のオルトヒドロキシルもまた活動力を増すことを発表した。

反酸化理論は、最近ソコロフ及びレッヅ(1949年)により生理学的基礎から批判された。それによれば、ラボーレーの仕事の主因な考え方は、ビタミンP因子はアドレナリンの酸化を遅らせること及びその必要性が毛細血管透過性に関係するだけに終わっていることである。換言すればビタミンP因子は、毛細血管壁又は毛細血管透過性の何れにも直接の効果を持たないのである。ソコロフ等はラボーレー等の学説を支持する為に新しい證據を発見しようと試みた。しかし彼等は、アドレナリンが毛細血管の調子を維持することを証明しなかった許りでなく、又アドレナリンが毛細血管の抵抗を増し又は毛細血管の透過性を減らすことを実証することができなかった許りでなく、アドレナリンの酸化を、ビタミンPが遅らせる働きに関する彼らの土台となっている見解帖の擁護を不十分とする證據が出た。バーロート及びコテレウが、ビタミンP因子は試験管内で、アスコルビン酸及びアドレナリンの酸化を遅らせることを証明したのは真実である。だが生体内でビタミンP因子の働きが同様であるということについてそれ以上の證據は彼らによっては持ち出されなかった。

血管に対するアドレナリンの血管収縮効果と細血管脆弱性の現象との間を結ぶに役立つ十分な證據はなかった。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(3) -2.薬理作用【放射線傷害】 -

薬業時報
昭和26年6月

ルチンの薬理と応用(3)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【放射線傷害】

〔放射線傷害〕
1947年にグリフィス等は過度の放射の結果の一つとして毛細血管の脆弱度が増加することを発見し、ラッテで放射作用に対するルチンの効果を発見した。すべての動物は1本の足に1回2385γだけ放射線を与えられた。同時に動物の半数にはルチン20ミリグラムが小丸薬の形で、腸壁の横面に添うて差し込まれた。この操作は3日毎に36日間繰り返えされた。試験進行中両群の間に重要な相違はなかったが、その後21乃至25日でルチン処置を受けた12匹は正常に返ったが、対象群はこれに反し35日経過後対象群の11匹とルチン処置の2匹がなお正常でない足を示した。ルチンは放射後回復する時間を速める様に想われる、としている。
レッカー及びフィールド(1948年)は犬に対するX線効果を実験した。25匹宛の2群が全身にX線放射中量350γを1回与えられた。1群は放射前1週間前からルチン50ミリグラムを毎日与えられ実験中続けられた。対象群中16匹はX線放射後13-30日で死んだ。ルチン処置群は、X線放射後16、28、31日目に各1匹宛死んだ、死んだ対象群は広範囲なエキモージス及び肺及び腸内出血を示した。ルチン群で死んだ3頭の中2頭には特徴のある広がった出血が起こっていた。生存した22頭は、放射後40乃至60日間観察されたが溢血等の異常なく、解剖の所見も同様であった。対象の生存動物3頭は、皮下溢血及び腸出血が出現していた。ルチンを与えられた犬の中数頭は劇しいトロンボサイトペニア及びロイコペニアを現したが、10乃至14日後に回復した。対象群は此等の条件から殆んど回復しなかった。フィールド及びレッカーは更に広範囲に渉る種々などビタミンP物質(ルチン、ヘスペリヂン、ヘルペリヂンメチルカルコン、エスクリン、及レモン皮製剤)に関する研究の結果を報告した。X線の中等量放射でヘスペリヂン及レモン皮製剤は若干の防護力を示したが、ルチンよりは少なかった。メチルカルコン、エスクリンビタミンCは働きがなかった。700-750γを与えられたラッテは防護されなかった。完全な致命的な放射線量(450γ)が与えられた時にルチン療法が臨床的症状又は死亡率を明らかに減少することを決定するのに失敗したと報告している。コーン等(1948年)はルチンで処置したラッテに対するX線放射の結果を研究し、ルチンは人又はラッテの血液の凝固時間に作用がなく又ヘパリンの働きを妨げもしないと云う結果を得たが、同量を用いた時、凝固を妨げるトルイヂンブリユーの反ヘパリン作用に対抗する結果を得た。クロンカイト等(1949、50年)は原子放射線の特別な効果について細く論証しているが、二十日鼠の試験ではルチンはX線放射の結果に対し動物を防護することが出来なかったと報告している。クラーク等(1948年)は、カルシウムフラボネートと称するレモン皮から作った水溶製剤を用い、モルモットに220-225γ放射した。対象動物の67%その内50%は13日以内に死んだ、一方処置動物は35%死んだが13日以内に死んだのは1頭もいなかった。処置した動物の出血症状は明らかに対象のものよりは少なかった。ハレー及ハリス(1950年)はモルモットのX線放射に対する血液学的感応を研究し、血液の凝固時間の明らかな増加を見出し、それは多分血球板の減少した数に相関関係があるのであろうとしている。

ソコロフ等(1950年)は、1回だけ800γを英国褐色種ラッテに放射した。レモンから採ったビタミンP製剤で防護されたラッテは対象よりはより低い死亡率を示した。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(2) -2.薬理作用【吸収及排泄・血圧実験・アスコルビン酸節約効果】-

薬業時報
昭和26年6月20日

ルチンの薬理と応用(2)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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2.薬理作用 【吸収及排泄・血圧実験・アスコルビン酸節約効果】

〔吸収及排泄〕
早期(1913年-1928年)の研究者は、ルチンが犬や家兎に経口又は静脈内注射で与えられた時には、その大部分が尿中から発見されることを報告している。ポーター等(1949年)は尿中に於けるルチン及びその他のフラボノールを決定する確実な方法発見の研究の途中で、人体内のルチンの吸収及び排泄に関するデーターを得た。
此等の研究者は7日間引続き1日2.25グラムと言う大量の用量にも拘わらず、スペクトロスコープ法を用うることによって、尿中に現れたルチンの量が非常な少量であったことを発見した。大便の試験はフラボノールの存在を現さなかった。それ故ルチンは組織の中に貯えられる又は行われた方法では決定し難い産物に速かに変形してしまうかどちらかを決定しなければならない。皮下注射を行ったときも兎も角くもルチンの一部が尿に現れる。
ドクトル・デエヅは家兎に数回経口及び静脈に与え、尿の24時間に渉る標本を収集した。経口的に与えた家兎から得た検体中にはルチンが痕跡だけ検出された。静脈注射の場合はルチンの八分の一量だけ尿中に見出された。
クラアク及びマツケイ(1950年)は、最近これ等の見解を確め且つ他の数種のフラボノイドを包括してその研究を広げた。

〔血圧実験〕
早期(1932年-36年)の研究者はルチンは血圧を上昇させると報告した者もあった。アルメンタノ(1938年)は、犬及び猫を用いて数種のフラボノイドの静脈注射による血圧に対する効果を研究した。ルチンは用いられなかったが、ケルシトリン、ケルセチン、ラムネチン、シトリン、ナリンゲニンは血圧降下に作用があり、ケルシトリンが最も作用が強かった。グリフィースは最近コーチに与えた書簡の中で、犬を試験動物とし10%ビリヂンのルチン10%溶液を1-5ミリグラム、パアキロ注射すると、3-4分間持続する水銀柱30-50ミリメートルの血圧降下をひき起こすことを記している。

〔アスコルビン酸節約効果〕
アスコルビン酸の働きを助ける或る種のフラボノイド化合物の能力は、早期(1937年)にスゼントジョルジーの仲間で注意された。モルモットは壊血病の食餌にシトリン、ヘスペリチン、又はデメチロヘスペリヂンを加えたときには壊血病が進行しないが、ケルシトリンは壊血病を防ぐことに失敗した。著者は此のデータから炭素の2と3との間の不飽和結合の存在と、第3のヒドロキシル群の存在が無能力をもたらすと結論している。
パパジョージ及びミッチェル(1949年)は、ルチンを補足したビタミンCを適当量与えると、副腎にアスコルビン酸の濃度を増すことを報告し、ルチンの持つ酸化防止作用がエピネフリンに働き(エピネフリンの酸化成績体アスコルビン酸の酸化に対し寄与するのであるが)アスコルビン酸を倹約する結果をもたらすことを示唆した。パパジョージ、ノーブル及びアマーゾン(1950年)はこの結果を副腎アスコルビン酸で繰り返すことは出来なかった。
アムブローズ(1949年)は、壊血病食餌を与えたモルモットに最小量に近い用量で与えたアスコルビン酸に対するルチン又はケルセチンの補給的若しくは余分の働きに就いて広い研究をやった。ルチン又はケルセチンは、食餌中でアスコルビン酸に代ることは出来なかった。そう処置された動物は壊血病が進行し、対象動物と異わない方向をとった。100ミリグラムのルチン又は50ミリグラムのケルセチンを経口的に毎日プロピレングリコール溶液で与えたアルコルビン酸0.2ミリグラムを、ルチン100ミリグラム又はケルセチン50ミリグラムと共に毎日与えた動物は、アスコルビン酸0.2ミリグラムだけ与えた対象よりは良好であった。
彼等の一般的な様子はよりよくなり、症状は明らかに減退した。而して関節の腫脹や硬さは減退した。アスコルビン酸とルチンを与えられたモルモットの生命はアスコルビン酸、ルチン又はケルセチンを単独に与えられたものより長命であった。死後の所見はフラボノールとアスコルビン酸の最小量に近い量を受けた群に同じであった。彼等の研究を続けた結果、副腎アスコルビン酸の量はルチンを採ることに無関係である。ルチンは彼等の実験の条件の下では、副腎アスコルビン酸の貯蔵に経済的な分子としての重要な役割は果たさないと証明することが出来た。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)

ルチンの薬理と応用(1) -1.はしがき 2.薬理作用【毒性】-

薬業時報
昭和26年6月13日

ルチンの薬理と応用(1)
      =米国農務省農薬研究報告から=
          (常磐植物化学研究所提供)
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脳溢血の予防薬として最近その用途を見出しつつあるルチンに関する米国農務省の農業研究報告として本年二月出版されたケミストリー・ファルマコロジー・アンド・クリニカルアップリケーション オブ ルチンを慶松一郎博士の好意によって通読の機会を得たので、医薬品取扱い関係の人々の参考となる部分を抄訳紹介することとした。但し一二知見を付加した処もある。

1.はしがき

ルチンが世に知られたのは1世紀以上前のことである。ニューレムブルグの薬剤師アウグスト・ワイスが1842年にその発見の報告をしている。

ルチンの名称は最初発見された植物藝香に基因する。間もなく他の植物からも発見され、今では植物界に最も広く分布している配糖体の一つとされている。本品を含む植物は以前は織物用繊維の染色用に用いられたが、合成色素の出現でその応用は欧米では止まり中華民国に影を止めるだけとなっている。医薬用の用途は漢方薬として用いられただけで、ルチンそのものとしての用途は近年迄なかった。

1936年にゼント・ジョルジーが、レモン及びハンガリア赤蕃菽からアスコルビン酸と分別して一物質を得、そのものが毛細血管の浸透性及び脆弱性の増加しているのを癒す働きを持っていることからこれをヴィタミンPと名付けた。ヨーロッパの化学者のこれに関する多くの化学的研究は、フラボン及びフラボン誘導体に近い関係があるということの外は働きのある物質の分離及び見分けに失敗した。その為VPの化学的性質は未詳の儘であった。

1943年、グリフィスリンダウェル及びコーチの三人によってルチンが毛細血管の脆弱性及び浸透性を通常の状態に回復することを初めてペンシルバニア州医学会に報告した。引続いて翌年も十四名の患者に対する実験結果を報告したので科学界の注目を惹き、その時以種々の医学薬理学及化学雑誌がルチンの性質や出血その他の用途に関し掲載した。

ルチンの医薬としての立場はハムブルヒ大学の生理化学研究所のクウナウ博士によって纏め上げられた。彼はルチンが空中、熱、弱い酸及びアルカリに割合安定で、無毒であり、適確な用量を与え得且経口的に高効能があることを実験し、ヴィタミンPの有効物質とした。

その分子式はC27H30O16・3H2Oで非常に純粋な状態に製し得るフラボノール配糖体である。本品は顕微鏡下では針状結晶の塊であるが、外観黄色の粉末で無味、無毒である。熱湯には溶けるが冷水には難溶である。水から結晶させたルチンは3分子の結晶水を含むのを正規とするが、結晶水は用意に種々の度合いに変化する。ただ第3分子は真空、高熱又は強力乾燥剤をその分離に要求する。分解点は約214度、軟化点は185度乃至192度である。

ルチンは広く自然界に存在し、現在約四十種の植物からその存在が報告されている。蕎麦、槐樹、黄色パンジー、ニハトコ、レンギョウ、煙草、アスパラガスはその主なものである。

2.薬理作用 【毒性】

今迄発表された多くの報告中には意見の激突や矛盾があるが、批判的な何等評価をなさずに記述する。

【毒性】
ルチンの毒性の完全な研究はウィルソン等によって行われた。ラッテ及びモルモットにパアキログラム30~50ミリグラム宛の静脈内又は腹腔内注射及家兎にパアキログラム100乃至200ミリグラムの静脈注射は無毒であった。白ラッテの成長はルチン1%を含む餌で影響を受けなかった。この餌で400日餌養したがルチン投与の悪結果は何等現れなかったし、試験動物の内臓の目方は正常であった。

ギルトナー(1947年)が行ったモルモットの餌養試験では、八週間の期間ルチンを1日10乃至20ミリグラムを含む割合で与え、最後に解剖に附したが死後の所見は正常であった。動物は試験期間中正常の体重増加をなし、以上の症状を示したときはなかった。

人体実験によるルチンの排泄に関する研究の中でポーター、デイケル及びコーチが、七日間一日2.25グラム宛三健康人に投薬したが、どんな症状も見出されなかった。 此の外にルチンの毒性の欠除を報告した人々にブランドル及びシャルテル、ガリノ、マスクレ及びパリス、チムメルがある。

引続いて右期間ルチンを患者に与えた医師の臨床実験の結果は人に無毒であることを示した。患者のある者は五年以上もルチンを毎日60ミリグラム或いはそれ以上を服用した。すべてのこれらのデーターはルチンが無害だと云うことを証拠だてるものである。

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ルチンの薬理と応用(1)
ルチンの薬理と応用(2)
ルチンの薬理と応用(3)
ルチンの薬理と応用(4)
ルチンの薬理と応用(5)
ルチンの薬理と応用(6)
ルチンの薬理と応用(7)
ルチンの薬理と応用(8)
ルチンの薬理と応用(9)
ルチンの薬理と応用(完)